- 2016年06月09日(木)
観劇ブログ〜「メルシー!おもてなし」に見る落語と演劇が生んだ幸せの化学反応
[カテゴリー]:舞台《演出家/作家》関連作(関連作品紹介)
一人で演じる落語と、みんなで作り上げる舞台。
その融合は、他に類を見ない幸せの化学反応を生み出しました。
その融合は、他に類を見ない幸せの化学反応を生み出しました。
こんにちは、店長です!
先日、パルコ劇場で公演されている「メルシー!おもてなし」を観劇してまいりました。
◎「メルシー!おもてなし」公式サイト → コチラ
パルコ劇場と言えば2016年8月7日をもって、一時休館となる事が発表されています。
数多くの名作が上演された屈指の名劇場の、一時とはいえ休館は、とても残念で寂しい限り。
3年後には大きくなって復活ということなのですが、ぜひまたステキな劇場となって我々を楽しませて頂きたいものです。
そのパルコ劇場では、現在クライマック・ステージと称して休館に向けて次々に作品を上演中。
「メルシー!おもてなし」はその中の1作となります。
いやー、面白かった!
その面白さが、他ではちょっと見られない独特な面白さで、思わずその感動と感激を皆さんにお伝えしたく記事を書いてみました。
本文には少しだけネタばれもございます。
これからの観劇を予定されている方は、ご注意くださいませ。
パルコ劇場が隅々まで「美珠町商店街」に。
観客と役者が共に創り出す、至高の“笑い”の空間。
劇場にお邪魔してまず驚いたのが、ロビー入口にドーンと掲げられた「ようこそ美珠商店街」のアーケード。観客と役者が共に創り出す、至高の“笑い”の空間。
※本記事のTOPの写真がそうです。
この商店街こそ本作の舞台となる商店街なのですが、こうして物語の世界がロビーにまで飛び出して来ている事にまずは驚き。
それだけではなく、劇場のあちこちに、商店街の大売り出しのような手書きのPOPが飾られていて、さながらパルコ劇場全体が美珠町商店街になっているかのよう。
加えてパルコ劇場一時休館のお知らせや、それに合わせたメッセージの募集なんかもあって、何だかお祭りのような雰囲気です。
何となくお客さんもそわそわしていて、既に始まる前から作品の雰囲気を堪能している様子。
また上演前には、中井貴一さんの声でご挨拶があるのですが、これが作品のことだけでなく休館の事にも触れたり、面白くも少し物悲しく、でも最後はしっかり笑わせてくれます。流石中井さん、上手い!そして声だけのご挨拶なのに、終わったら満場の拍手!
このあたりから、何だか劇場のお客さんの雰囲気がグッと「前のめり」になる感じがありました。
何というか、この作品、この時間、この場所を、隅から隅まで楽しみ尽くしてやるぞ!という気合が生まれたように感じます。
演劇は舞台と客席のキャッチボール、と言われることがありますが、本作ではその言葉を改めて実感しました。
舞台の上で繰り広げられる芝居と笑いが、客席の反応を得てどんどんとテンションが上がって行き、さらにそれがまた客席の盛り上がりへと戻っていく。
まるで、舞台と客席の共同作業で作り上げていくかのような、不思議な空間でした。
◎パルコ劇場クライマックス・ステージ → 公式サイト
志の輔らくごの“四本の笑い”を1本の舞台へ。
他に類を見ない“笑い”の誕生。
立川志の輔さんが演劇的な要素を含んだ新作落語を発表している「志の輔らくご」。他に類を見ない“笑い”の誕生。
1996年から20年に渡りパルコ劇場で上演され、まさにパルコ劇場の名物と言って良い演目です。
その「志の輔らくご」の人気の四つのお話を、一つにまとめて現代劇にしたのが、本作「メルシー!おもてなし」。
そのまとめ役を担ったのが、脚本・演出のG2さん。
かつて古典落語を舞台化した経験があるG2さんが、いつか志の輔さんの新作落語を舞台化したい…と思っていたところに、今回のクライマックス・ステージで遂にそれが実現したとのこと。
元ネタになった志の輔さんの落語は「踊るファックス」「ディアファミリー」「ガラガラ」「メルシーひな祭り」。
※これらは『志の輔らくご DVD/Blu-ray-BOX』(イーオシバイ/商品一覧ペーシへ)にも収録されています。
元は落語なので、もちろんそれぞれ個別のストーリーがありオチがあります。
それをうまーく融合させて、1本の大きなお話にしたG2さんの手腕は流石。
それでいて、単なる現代劇ではなく、落語の妙が随所に残っていて、それが絶妙な面白さを生んでいます。
1人で演じられる落語と、大勢で作り上げる舞台。
落語が落語家の中で完成度を上げていく作業だとすれば、舞台は役者の演技がぶつかりあって作品を生み出していく。
それでも舞台の途中、大きな笑いが起こるのは、たいてい落語でも大受けするシーンだったりして、アプローチは違っても、そこに注がれる熱量と向かうべく“笑い”というゴールは同じなのだなと実感すること度々。
結果として本作「メルシーおもてなし」は、落語と舞台の丁度中間にあるような、不思議な笑いを生み出すことに成功しているように思えます。
本作を見終わった後、無性に今度は志の輔さんによる落語版の各作品をもう一度見たくなりました。
同じ落語でも、舞台を見る前とはまた違った“笑い”が生まれる予感がします。
◎『志の輔らくご DVD/Blu-ray-BOX』 → イーオシバイ/商品一覧ペーシ
何とも豪華なキャスト陣の息のあった掛け合いも必見!
もともと落語ということで、とにかくセリフが多い舞台ですが、豪華キャストの皆さんによる掛け合いも見事。とにかく見ていて楽しい舞台です。
特に物語を引っ張る中井貴一さん&勝村政信さんのテンションと、音尾琢真さんのいや〜な感じのエリート感(褒めてます)は流石。
また個人的には阿南健治さんの二役にびっくり。この二役があまりにも違い過ぎて初めは阿南さんが演じているとは気が付きませんでした。
ちなみに、勝村さんと言えば元第三舞台、音尾さんはTEAM NACSメンバー、そこに元東京サンシャインボーイズの阿南さんに、双数姉妹出身の明星真由美さんなどなど、イーオシバイでも人気の劇団・団体出身者がずらりと揃っているのも、演劇ファンとして楽しい限りです。
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以上です。
イーオシバイでも「志の輔らくご」のDVD&Blu-rayを取り扱っておりますが、この「メルシー!おもてなし」の上演に合わせて、こちらの落語版にもまた注目が集まって来ています。
先に落語版を見ていても楽しいですし、先に記したとおり舞台を見てから改めて落語版を見直すのも、新しい発見があって良いかと思いますので、未見の方はどうぞチェックしてみてください!
「メルシー!おもてなし」は 6月26日 (日) までパルコ劇場で上演後、場所を大阪に移し6月28日 (火)から30日 (木)までメルパルクホール大阪で上演予定とのこと。詳しくは、公演公式サイトをご参照ください。
◎「メルシー!おもてなし」公式サイト → コチラ
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