- 2011年11月22日(火)
「ロッキー・ホラー・ショー」的オススメDVD
[カテゴリー]:舞台《演出家/作家》関連作(パルコ)
つい先日、暑い日が続くなぁと思っていたはずなのに、気がつけばまもなく12月。
あっという間ですね。
さて、そんな今冬の目玉の舞台は…
PARCOプレゼンツ「ロッキー・ホラー・ショー」(以下、RHS)ですね!
RHSとは、1973年にロンドンの小劇場からスタートし、
いまやブロードウェイをはじめ各国で上演されている作品です。
75年に作られた映画『ロッキー・ホラー・ピクチャー・ショー』(以下、RHPS)も
世界中で上映され、やがて観客が一緒に歌い、踊り、紙吹雪が舞い、米をまき散らすという、独特な上映スタイルが定着し、カルト的な人気を博しました。
今回の公演では、なんといっても、演出のいのうえひでのりさん、主演の古田新太さんが
大のRHSファンですから、RHSファンの皆さんの期待値もMAXだと思います。
初日まではまだ少し日にちがありますので、RHSが好きな皆さん、
今回の公演ではじめてRHSを体験する!という皆さん、
そして「RHSってなに??」という方々にむけて、
独断と偏見で私が
「RHSに興味があるなら、コレも見て!」
という作品をいくつかご紹介させていただきます
きっと、皆様のお気に召すことと思いますので、ぜひご一読下さい。
『メタルマクベス』DVD鋼鉄のロックスペクタクル! クドカン×劇団☆新感線×シェイクスピア。 衝撃の《新・マクベス》誕生! |
RHSの映画が製作されたのは1975年ですが、
実際に日本で盛り上がっていたのは1980年代以降かと思います。
そこで、ご紹介したいのがこの『メタルマクベス』です。
ROCKやHRHM(※1)が好きな方で、さらに80年代〜90年代に
ライブハウスへ通っていた方の心に響くこの作品。
80年代を生きたメタルバンドと、マッドマックス的近未来が交錯する本作品。
しかもへヴィメタルなのにシェイクスピア。
聞いただけではちょっと「?」と思ってしまいますが、観ていただければ、
この面白さを即ご理解していただけ、お気に入りいただけると思います
生バンドが入った舞台でメタルボーカリスト冠徹弥がシャウトしている様子は、
シェイクスピア作品であることを忘れてしまいます。
もちろん、内野聖陽さん、松 たか子さん、上條恒彦さんなどの俳優陣も歌います。
クドカン節も炸裂しており、笑いあり、涙あり、愛あり、狂気ありの世界を
いのうえさんがメタルに乗せて見事にメタルとシェイクスピアを融合させています。
80年代ロックシーンを生きたあなたにお薦めです
※HRHM: HR=ハードロック/HM=へヴィメタル略
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実は残虐にならざるを得ないような、プレッシャーを感じているカリギュラ。
そのカリギュラに対して、周りの人々が心底恐れていて、決して逆らうことができない描写は、
観ているこちらまで影響し、カリギュラが登場すると緊張して息をするのも忘れてしまうほどです。
そういった恐怖の中にある、美学。
その美学は、RHSのフランクの傍若無人で奔放な様と共通点がある気がします。
フランクは、マッドサイエンティストですから、自分の実験のためなら、
他人を犠牲にしてもいいと思っている残虐さを秘めています。
…秘めてないで、堂々と出してますけど
このマッドサイエンティストとしての傍若無人な部分と、
それに逆らえないコロンビアのような立場の人がいる点では、
暴君的存在であるのではないでしょうか。
でもかわいいしセクシーだから、そこまで怖くないんですけどね。
カリギュラが王として君臨するが故の苦悩、
それは凡人には計り知れないプレッシャーだということを感じる本作品。
RHSでフランクが歌う「I'm going home」で泣いてしまう人にお薦めです
さあ、さあ、お立会い! 蛇が出るか… 何が出るかは、はいっ、見てのお楽しみ! 『毛皮のマリー』DVD
鬼が出るか、
故寺山修司さんが、美輪明宏さんのために書き下ろした作品です。
男娼マリーと、彼が育てる息子、欣也。
もう、これは、RHSでのフランクとロッキーの関係のようなもの!
マリーは日本一ゴージャスな男娼
そのマリーが外界との接触を経たせて育てている、絶世の美少年欣也。
そして謎の美少女(男性が演じる)や、筋肉隆々の水夫、小人の下男に、醜女(しこめ)のマリー。
とにかくありとあらゆる性別・性癖の登場人物が次々と舞台上に現れる様子は、
まさに見世物小屋かサーカスか。
寺山ワールド全開なこの脚本を美輪明宏さんが演出し、
その見世物性に拍車をかけます。
幻想的な舞台であるにも関わらず、永遠の美を理想としても、
美には限りがあるんだという現実の両方を表現する魅力的な作品です。
若い時分に観たのであれば、その美しい世界と、美しい登場人物たちに目を奪われていたでしょうが、
大人になった今となっては、美しさに固執することや歳を重ねることの怖さ、
そしてやがて迎える醜く老いさらばえていくという事実に驚愕すると同時に、
その中にある真の美しさに魅了されると思います。
もはや、どの部分がRHS的なのかということではなく、
『毛皮のマリー』という作品全体が、RHSを好きな皆さんにお薦めです
伝説の戯曲を白井晃の演出により32年ぶり復活上演! 【作】:寺山修司
『中国の不思議な役人』DVD
言葉の錬金術師・寺山修司の愛と死の物語。
【演出】:白井晃
【音楽】:三宅純
【振付】:小野寺修二
【出演】:平幹二朗 秋山菜津子 岩松了 夏未エレナ 田島優成
男装の麗人や、白塗りの大駱駝艦の不思議な踊り、心を揺さぶる歌声に、心を焦がすストーリー。
退廃的でエロティックでグロテスクな中で発せられる美しい言葉の数々に耳を傾けると、
その奥にある真の愛に触れることができるかもしれない…。
キリリとした秋山菜津子さんの軍人姿や、白くて艶やかな魅力を携えた娼婦たち、
鍛え抜かれた肉体美を持つ男たち、そして平幹二朗さんの重厚でありながらも
どこか可愛らしい役人と、多種多様な癖のある登場人物が織り成す幻想的な世界。
そして、退廃的な演出に魅せられていきます。
その衝撃は、初めてRHSを観たときの、あのなんともいえない居心地の悪さと、
でも惹きこまれていく抗えない魅力に似ているかもしれません。
RHSのデカダンスの虜になったあなたにお薦めです
いかがでしょうか。
いつもとちょっと違った感じのセレクト&お薦めポイントでお送りしました
まだまだ、RHSが好きな皆様にご紹介させていただきたい作品はございますが、
それはまた日を改めて。
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PARCOプレゼンツ「ロッキー・ホラー・ショー」詳細
▼「ロッキー・ホラー・ショー」公演ページ
http://www.parco-play.com/web/play/RHS/
▼ストーリー
http://www.parco-play.com/web/play/RHS/story.html
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