- 2014年08月28日(木)
不朽の名作が再び!『朝日のような夕日を連れて』の魅力
[カテゴリー]:舞台《演出家/作家》関連作(第三舞台・鴻上尚史)
私は先日、KOKAMI@network.vol.13『朝日のような夕日をつれて 2014』を
観劇してきました。
何を隠そう、私は大の第三舞台ファン。
その中でも一番大好きな『朝日のような夕日をつれて』ということで、
観る前も観た後も、テンションがうなぎ登り!
また最近のキーワードランキング(2014年8月上旬ランキング)でも
『朝日のような夕日をつれて』がランクインする等、
イーオシバイのお客様も同じく興味津津の方が多いようですね!
そこでこの度イーオシバイでは、皆様からの多くのご要望にお応えして、
『第三舞台 VINTAGE BOX』/『第三舞台 VINTAGE BOX 2』に収録されていた
過去の『朝日のような夕日をつれて』を、単品でも発売することにいたしました。
第三舞台の過去の傑作をまとめて楽しみたい方は、これまで通りBOXを。
『朝日のような夕日をつれて』だけチョイスしたい方は単品をご検討ください!
『朝日のような夕日をつれて'87』
[作・演出] 鴻上尚史
[出演] 大高洋夫 小須田康人 勝村政信 筧利夫 伊藤正宏
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『朝日のような夕日をつれて'91』
[作・演出] 鴻上尚史
[出演] 大高洋夫 小須田康人 筧利夫 勝村政信 京晋佑
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『朝日のような夕日をつれて'97』
[作・演出] 鴻上尚史
[出演] 大高洋夫 小須田康人 筧利夫 松重豊 松田憲侍
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『第三舞台 VINTAGE BOX』
『朝日のような夕日をつれて'91』『天使は瞳を閉じて』『トランス』『スナフキンの手紙』
『リレイヤーIII』『朝日のような夕日をつれて'97』『ピルグリム』
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『第三舞台 VINTAGE BOX 2』
『デジャ・ヴュ'86』『朝日のような夕日をつれて'87』『ビー・ヒア・ナウ』
『ハッシャ・バイ』『パレード旅団』『鴻上尚史の世界#1』
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で、これだけだとちょっと私の“熱”が収まらないので、
この場を借りて、その『朝日のような夕日をつれて』の魅力を語らせて頂きます!!
まさに《伝説的》という名にふさわしい傑作舞台
『朝日のような夕日をつれて』(以下『朝日』)と言えば、鴻上尚史さん主宰・2012年に解散した《第三舞台》の代表作の一つ。
80年〜90年代の“小劇場ブーム”を象徴する、傑作舞台です。
初演が1981年、その後、83年、87年、91年、97年と再演を重ね、
そのたびに爆発的に動員が増加、当時はまだインターネットなどなくて、
チケットを取るために発売日の前の日からぴあの窓口に並ぶなど、
社会現象を引き起こすほど人気を集めました。
私は91年版を新宿・紀伊國屋ホールで観劇、当時、観劇の面白さに目覚めかけていた私が、
「頭をかち割られた」ような衝撃を受けた個人的にも思い入れの強い作品です。
2011年の解散公演『深呼吸する惑星』を観劇した時に、
これで《第三舞台》も最後か……という感慨や寂しさと共に、
どこか少しだけ、何だか物足りないような、尻切れトンボのような気持ちを持ちました。
そう。
第三舞台といえば、やはり『朝日』。
『朝日』を観ないと、やっぱり終われないのです。
解散公演時は、その鬱屈をDVDにぶつけ《『朝日のような夕日をつれて』連続上映会!》と称し、
自宅でパワープレイをしたのを覚えています。
そんな私の心の声が届いたのか。
今年、果たしてついにそんな『朝日』の再演が決まり、私はすっかり有頂天なのでした。
情熱と円熟の合間にある圧倒的な《演劇》感
劇作家サミュエル・ベケットの古典的不条理演劇の傑作『ゴドーを待ちながら』の世界と、立花トーイというおもちゃ屋さんの会社の世界が複雑に絡み合い、
その中で“遊び”や“人生”、“政治”や“文化”や“未来”をパッチワークのように散りばめて、
そこに当代きっての【言葉遣い】であった鴻上さんの圧倒的なセリフ量、
若手人気俳優たちの汗と熱量が加わり、
観た者の感性や感情を激しく揺さぶりながら駆け抜けていく、他に類のない舞台……
それが私の中の『朝日』でした。
今回の『朝日』は、紀伊國屋ホール50周年記念の作品として上演。
《第三舞台》は解散してしまっているので、KOKAMI@networkとしての上演です。
最後に『朝日』が上演されてから17年……
初演の81年からは、実に33年経っての再演。
果たして『朝日』はどう変わったのか、そしてそれを観る自分はどう変わったのか、
どこかワクワクしながら、そしてちょっと不安な気持ちでの観劇でした。
出演は、これまでの『朝日』には全て出演されている、大高洋夫さんに小須田康人さん。
そこに藤井隆さん、伊礼彼方さん、玉置玲央さんという、演劇好きとしてはなかなか
たまらないお三方加わって、2014年版は開幕しました。
詳しい内容
グッと円熟した、あるいはスタイリッシュになった『朝日』がそこにはありました。
出演者の熱演や定番のシーンや音楽は、17年前と変わることなく観る者を圧倒します。
それでいて、今回の『朝日』は各シーンがとても見やすく整理されている感もありました。
過去の『朝日』はその圧倒的な情報量と熱量で、まるで熱に浮かされている間に終わる
祝祭空間の中にいるかのようでしたが、今作では作品の中に内包されるメッセージや
テーマがより浮き彫りになって見やすくなっていたような気がします。
これが果たして、私が年を取ったせいなのか、それとも17年という年月を経た
『朝日』の進化なのか、そこはわかりません。
ただ、かつての「何だかわからんが凄いものを見た!」という感覚が、
もう少しシャープになり「これってこういう事かな?こんな事かな?」と少しだけですが、
作品の本質的なところに寄り添えた気がします。
見終わった後、同行者と色々話ながら、「あ、過去のあのシーンがこう変わってたね!?」
「あのシーンがなくなってた!」等など、色々と記憶を掘り起こすのも楽しい作業でした。
もちろん、帰宅後すぐにDVDで過去作で復習しましたが!
今回の2014年版『朝日』は、傑作舞台である『朝日のような夕日をつれて』の再演としてだけではなく、
正当に進化した新たな『朝日のような夕日をつれて』になっていると思います。
過去作を見た方はもちろん、見ていない方も、日本の演劇史に残るこの傑作舞台を、
生で楽しんで頂ければと思います。
◎『朝日のような夕日をつれて 2014』公式サイト → コチラ
★東京での凱旋公演も決定したようですね!
過去の『朝日のような夕日をつれて』を振り返る
ところで先日、過去の『朝日』を未見のスタッフから「どれがオススメ?」と聞かれました。「全部見ろよ!」と言いたいところがですが、観る前に各作品の特徴を伝えておいた方が、
より楽しめるのではないか、と思いまして、この場を借りて少しだけ説明です。
もし未見の方がいたら、参考の一つにして下さいませ。
『朝日のような夕日をつれて'87』
[作・演出] 鴻上尚史
[出演] 大高洋夫 小須田康人 勝村政信 筧利夫 伊藤正宏
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映像として残っている『朝日』としては一番古いものになります。
85年に上演された『朝日』で紀伊國屋ホール進出を果たし、
まさに小劇場ブームの象徴として、第三舞台が注目を集め始めていた頃に上演されました。
大高さん、小須田さんに加え、現在でも多方面で活躍する勝村さん、筧さんが参加。
少年・医者役の伊藤さんはこの後放送作家として大活躍をされる方で、
映像で見られるのはある意味貴重です。(笑)
この87年版で「紀伊國屋演劇賞」を受賞。
また初めて全国公演を敢行し、全国に第三舞台の名を広めました。
ちなみに同時期に、木野花さん演出の『朝日のような夕日をつれて 天ノ磐戸編』が上演。
『朝日』が男五人の芝居に対してこちらは長野里美さん、筒井真理子さん、山下裕子さん、藤谷美樹さん、
木野花さんという女性五人の芝居だったか。
私は未見です。悔しい!
『朝日のような夕日をつれて'91』
[作・演出] 鴻上尚史
[出演] 大高洋夫 小須田康人 筧利夫 勝村政信 京晋佑
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「倍々ゲームで動員が増える」と言われた第三舞台を象徴する舞台。
第三舞台の旗揚げが81年。その旗揚げ公演も『朝日』だったのですが、
その時の動員が300人程度だったと言われています。
それから10年。この頃、動員は3万人に届いていたと言うのですから、
その爆発力の凄さがわかるというもの。
ちなみにバブル景気が弾けたのが91年の2月と言われていて、この公演も同じく91年の2月。
色々な意味で「弾けた」作品になっていると思います。
私の周りではこの91年版を「ベスト朝日」で推す人が多しです。
当時では画期的だった通信衛星を使った中継「クローズド・サーキット」を実施。凄い。
ちなみに同年、第三舞台は『天使は瞳を閉じて インターナショナル・ヴァージョン』で、
イギリス公演を実施!次は世界だ!
『朝日のような夕日をつれて'97』
[作・演出] 鴻上尚史
[出演] 大高洋夫 小須田康人 筧利夫 松重豊 松田憲侍
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紀伊國屋サザンシアターこけら落としとして公演。
この公演のあと、鴻上さんは1年間のイギリス留学へ。
2001年より第三舞台は10年間の封印を宣言。
そして冒頭で少し書きましたが2011年に復活&解散公演をするわけで、
そういう意味では、この97年版が「最後の朝日」でした。
※今回の2014年版がもしDVD化されたら嬉しいのですが!
見落としてはいけないのが、松重さん!
そう、今、ドラマ「孤独のグルメ」で俄然注目を集めているあの松重さんです。
「孤独のグルメ」のどこか飄々とした五郎役とはまた違い、
アツい演技をする松重さんを堪能できる、貴重な機会なのです!
いかがだったでしょうか。
『朝日のような夕日をつれて』は何度も再演を繰り返しながら、
その都度、新しく生まれ変わってきた舞台で、日本の演劇史の中でも特別な作品だと思います。
『朝日のような夕日をつれて2014』が生まれた今、
改めて過去の作品を振り返ってみて、その先進性・時代性を感じてみるのも、
良いのではないでしょうか。
というわけで、完全に私の趣味でお送りした『朝日のような夕日をつれて』特集でした!
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